東京高等裁判所 昭和26年(う)2914号 判決
弁護人は原判決は第一の事実認定の資料として被告人の公判廷の供述を引用しているが被告人は原審第一回公判廷において起訴状記載の公訴事実について大体公訴事実を認めると言つたけれどもその後右公訴事実は第三回公判廷において陳述された起訴状補正請求書により補正されたのであるから前の自白は後の補正された公訴事実に対する自白とはならない訳であるのに原判決は被告人の供述がその第何回の供述であるかを明示せないで漫然と当公判廷の供述として引用したことは刑事訴訟法第三百三十五条において証拠の標目を示せとしておる趣旨に反し違法であるという趣旨の主張をしておるけれども、原判決はその標目において決して被告人の供述を判示事実と同趣旨の供述即ち自白とは言つておらないのであつて右は被告人が各公判期日を通じ原審公判において述べた事実で原判示第一の事実と一致する部分の供述という趣旨であることは明らかであり且つ公判廷における同被告人の供述は公判期日が数回に亘つてもその間に矛盾撞着あるものがない限りこれを通じて一連の供述として採証しうるものであるから原判決が特にこれを第何回公判の供述であるかを明示しなかつたことはこれを違法とするには足りない。
(註 本件は審理不尽による事実誤認乃至理由不備による破棄自判)